ちょうどこのブロードステアーズに行った時は、上記で述べた「イギリス嫌い」の不満が貯まっていた頃でした。
自然と自分との対話、ブロードステアーズ
ブロードステアーズにはビーチがあります。私がイギリスに居た間、ビーチといえば、ほとんど石の海岸。なので「ああ、イギリスの海は全然違うんだな」と感じてました。だから私にとってこの砂のビーチは、少し日本を感じられた。とても嬉しかったのを覚えています。
どうして嬉しいか?
簡単に言えば、ホームシックですね。イギリス生活にうんざりしていた。そして日本の生活が恋しかった。
砂浜をただ歩く中でいろんな想いが交錯していました。どうして私はイギリスにいるんだろう? でもそれを決めたのは私自身……なんて。当時、私自身もどう整理したらいいか、処理したらいいかわかりません。
ただひたすら歩いていると見えてきたのは、ずっと続く岸壁の姿。
別に深く考え込んでいたわけではありません。浮かんでくるいろんな思いを、ただただ受け止めながら歩きました。
気づいたら端まで来てたりして……。
海に砂に岸壁に。自然の風景って不思議です。変わらない風景が続いているようで、どれも全く違っている。無機物のように見えるけど、生き物のようにも見える。なんか言葉では言い表せないけど、語り掛けてくるものがある。
そんな大自然に影響されてか。知らず知らずの内に、自分の心象が浮き彫りになってくるのかもしれませんね。
まぁ心象って言ってもだいたいは不満なんですけどね。この時の私は。自然に向かって愚痴ってたわけです。海のバカヤローみたいな。いや、口にだしてはいないですがね。よく映画やアニメである、あのシーンはこういう気持ちを分かり易いように表現したものなんでしょうか。
まぁでも、私にとってそんな日常生活の不満は、言い換えれば、私自身をいろんな場所へ向かわせる原動力にもなっていた。それも事実です。
イギリス生活。もちろん嫌だったこともありますよ。でも良かったこともあった。
いや本当に友達には恵まれていた。クリスチャンの方達とも出会えてよかった。ミュージカルにも出会えたし、旅の楽しさも知ることができた。もちろん、旅の楽しさは旅先でのいろんな出会いも含まれているわけで。言葉では言い表せない程の出会いがありました。
きっと自分では気づいていない「良かった」もあれば、自分で勝手に膨らませていた「嫌」もあったはず。良し悪しに含まれない大切なことも山ほどあったはずです。今改めて感じるのは、良しも悪し含めた経験全部が自分にとってかけがえのないものだっていうことです。
つまりは楽しかったんですよ。それは、ただ楽しいだけの楽しいじゃなく、苦しいこともひっくるめた楽しさですけどね。
さてイギリス・カンタベリーでの留学生活もここで終わり。次回からイギリスを離れ、ヨーロッパ鉄道周遊の旅に向かいます。つづく……