行雲流水

禅僧(禅宗のお坊さん)が綴る発想の種。旅は、私に大きな影響与えてくれました。 旅は、今の私を形作る糧となりました。 旅は、仏教徒として、禅僧として今を生きる私の大事な一部となりました。

おとぎの国の城を求めてフュッセンへ:国王が描いた理想の城、そして現実【旅の記録34】

途中下車したアウグスブルクより、再びフュッセンを目指し、出発! 移り変わっていく車窓の景色の眺めていると……

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雄大な山々の姿が見えてきました。

 ヨーロッパ鉄道周遊の旅⑥ ドイツ編フュッセン

ドイツの観光街道の一つ、ロマンティック街道。実はローテンブルクやアウグスブルクもこの街道中にある名所。そのロマンティック街道の終着点となるのが、ここ「フュッセン」です。

フュッセンの街

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綺麗な街並み。溢れる自然。

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雄大な山々がそびえ立ち、緑あふれる素敵なところでした。水もエメラルドグリーンで本当に綺麗。

 川はちょっとわかりにくいかも。こちらは湖の水質。

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川も実際見るとこんな感じです。

ちょうど夕暮れ時となりました。

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赤く染まった空と共に建物や橋、道路など、町一面が淡く赤色に染まります。少し感動しました。

 日も暮れてきたので、夕ご飯。そしたら、お店の入り口に、なにやら物騒なものが……。

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捕まりました(笑)

さて、お城が見たくてフュッセンに来たわけですが、街中にはこんなお城が。

ホーエス

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フュッセンの街の中心にあるホーエス城。なんかいろんな形の窓がいっぱいあって、造りの凝った面白いお城だなぁ。

と、ぱっと見、思ったのですが……

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絵っ!?

よく見たら絵でした。騙されたけど、これはこれでおもしろい。

 

黄色いお城、ホーエンシュヴァンガウ城

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フュッセンの街から約4km。目的のお城がある場所までやってきました。その場所にあるお城は二つ。その一つが黄色いお城、ホーエンシュヴァンガウ城です。

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お城の中は見学することができます。見学して印象に残っているのは、王様の部屋にある隠し通路。別に外に逃げるとか、そういう時のためにあるわけではありません。それは王様の部屋から王妃の部屋を直接繋ぐ隠し通路なのです。

 近くにいた外国人観光客が、その説明を聞いて爆笑。どっちかというと、それが一番印象に残っていますね(笑)

 

ノイシュヴァンシュタイン城

黄色いお城、ホーエンシュヴァンガウ城のすぐ近く。お目当てのノイシュヴァンシュタイン城が見えます。

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シンデレラ城、眠れる森の美女の城。それらモデルになったお城とも言われています。

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なんか諸説あるそうですが、そんなのはどっちでもいい。おとぎの国に出てきそう美しい城が、実際に目の前にあるのですから!近くで見ても真っ白で壮大なお城です。

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写真に収まり切りません。

 もちろん、このお城の中も見学できます。なんと中に洞窟部屋もあるんですよ!? もちろん、人工のものですがびっくりしました。

一体何のために……

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悲惨な歴史

実はこのお城、美しい見た目とは裏腹に、悲惨な歴史がありました。このお城を造らせた当時の国王、第四代バイエルン国王ルートヴィヒ2世。神話に魅了され、建築と音楽に破滅的浪費を繰り返した狂王の異名で知られています。

 彼は、実用性には欠けるこの城を建てるだけでなく、更には他にも自分の趣向に沿った城を建て始めようと多くの借金を積み重ねました。

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結局、彼がこの城に住めた期間は、たったの102日間。しかも、まだまだ建築途中だったそうな。

そりゃこれだけのお城を建てるだけでも相当のお金がかかると予想されます。建築技術も今とは違いますし、労力だって馬鹿になりません。しかもこのお城、本当に彼の趣味だけの為に造られたお城でした。

 結局なんだかんだで、彼は王の位を降ろされ、ベルク城へ送られました。その翌日、医師と共に散歩に出たのが最期。水死体になって発見されたそうです……。未だに死因は謎に包まれたまま。

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夢見た彼のなんとも痛ましい現実の姿が私の中で浮かんできました。

 

現実と理想

ひたすら自分の夢の世界だけを見続け、それを現実にも作り出そうとした彼。確かにこのお城は現実離れしているほど素敵で、本当におとぎの国のようでした。

 しかし本来、城には様々な機能があります。住居、政治や執務、外交、軍事拠点、などなど。しかし、この城にはそれらの機能性が皆無。耐久性も低く、実用性が全くありません。

 夢を見る事。おとぎの国を想う事。理想を抱くこと。それは別に悪い事ではありません。むしろ理想も大事な人間の一部。理想は現実を変えていける大事な一つの力だと私は考えます。しかし、現実を見失っては、その理想は悲劇になってしまう。現実を見ない理想は絶対に無理がきてしまう。

 理想だけに囚われてもいけない。現実だけに囚われてもいけない。理想を実現するには、文字通り、現実も共に大事なんだ。

彼の夢や理想が詰まった美しいこの城を見て。現実的な実用性がなく、中身が空っぽなこの城を見て。私は色々と考えさせられました。

 少し余談ですが、生前、彼は「私が死んだらこの城を破壊せよ」と遺言していたそうです。本当に自分の為だけに建てた城だったんですね……。しかし、彼の願いとは裏腹に、城は壊されず地元の住民に開放されました。そして、今では観光資源として役立ち、また名所として人々に愛されています。

 彼の意志に反して、今、理想のお城は、現実に人々を喜ばせ、役に立っています。理想。それを現実に活かすか、殺すか。その差は一体なんなのでしょうか。

私が感じるのは、その差には、ほんのちょっとのボタンのかけ間違い、それほどわずかな差しかないということでしょうか。