結果的にトラブルがあって、別のホストファミリーへチェンジした私。新しい受け入れ先は【旅の記録12】で触れたように、少し個性的な人でした。なんにせよ、新しい場所でのホームステイ生活が始まりました。
イギリス留学カンタベリー編⑧ 日本好き(?)なイギリス人
新しいホストファミリーが私を受け入れてくれた理由。それは、学校曰く、日本が好きだからなそうな……。一体、日本のどんなところが好きなんだろうか? その答えはすぐに話してくれました。
「さむら~い。日本は特に武士が好きなんだ。はッ! アチョ~」
いや、それはカンフーだろ……
と突っ込みたくなりましたが、そこは抑えました。どうやら侍とか武士といった類が好きらしい。
これはどこか映画とかでみる典型的に日本を誤解してるやつか? ハラキリ~とか、ニンジャ~とかいうんじゃないか? と、心配しましたが、さすがに、そこまではひどくありませんでした。
でも大分、趣向は偏っているなぁと思いもしました。まぁ日本が好きといって受け入れてくれるならいいか。そうしてここでの生活を続けました……。
が、 ある日こんなことがありました。
日本の漢字を書いてくれ!
漢字を書いてくれと頼まれた私。
「どんな字が書いてほしいですか?」と私が尋ねると、「”べん”をいう字を漢字で書いてくれ」と頼まれました。
「弁? 勉? 便?」
いっぱいあるけど……、まぁいいか。適当に書きました。
「よし、わかった。じゃぁこの漢字の見本、筆で書けるか?」
「見本? 筆かぁ……」
と、内心私は思いながら、まぁ仕方がない。字にはあまり自信がなかったけど、ちょうど持ってきていた筆ペンで漢字を書く。
「私は日本語が好きだから、孫に書いてやるんだ。どの字がいい?」
「どの字がいいって、意味のことですか?」
「まぁ、そういうことだな」
「弁は弁当とか、熱弁(話す)とか、安全弁(調整)とか、そういう意味がある。単体だとバルブ的な意味かな……。勉は勉強とか勤勉とか、単体だと勉むって意味かな。便は便利とか。単体で便りって意味もあるけど、トイレの意味もありますね」
「孫の為にやってんのに、どうしてお前は悪い意味をあげるんだ?」
「え? ごめんなさい。そういうことなら『勉』が一番いいと思う……」
「よし、わかった」
……そして後日。
「おい、孫の為に書いてくれた日本語、タトゥーにしたんだ」
……絶句(タトゥ-? 入れ墨? それって一生消えないじゃん!)
「ほらほら、しかも私が書いたんだぞ」と息子の嫁さんが登場。
……絶句(書いたって? まさか自分で? 息子の嫁さんに?)
息子の嫁さんに書かれた孫の為の文字「勉」。一生懸命、書いたんでしょう。それはすごくわかります。でも、日本語初めて書いたんだな……。字が震えてる……。止めだの、払いだの、まるでない……。
凄く自慢げに微笑んでくるホストファミリー達。頭を抱えそうな私。(でも、もう一生消えないんだな……これ)自分の素直なリアクションを抑えて、笑顔を返すのが精いっぱいでした。
そうなんです。どこか噛みあわない。ズレている。日本観もズレている。もちろん、私の英語もまだまだな事もあったのだろうと……。ですが、明らかなズレがありました。
つづく……